社会的養護って何? 親と暮らせない子を支える仕組みを3分で整理

「施設の子って、親がいない子なんでしょう」。
児童養護施設のボランティアに興味を持った方から、何度も聞かれた言葉です。
実際には、児童養護施設に来る子の9割以上に親がいます。

はじめまして、三浦早苗です。
子供の学習支援を行うNPOで、児童養護施設にボランティアを派遣するコーディネーターを8年務めました。
いまはフリーのライターとして、企業の社会貢献や子供の福祉について書いています。

親と暮らせない子供たちを社会で育てる仕組みを「社会的養護」と呼びます。
言葉は聞いたことがあっても、里親と施設の違いや、子供がどんな経緯でそこへ来るのかまで知っている方は多くありません。

この記事では、最初の見出しで全体像を3分で読めるようにまとめました。
そのあとで、仕組みの中身と誤解されやすい点、私たちにできる関わり方を順に紹介します。
数字はこども家庭庁が公表している最新の資料に合わせています。

3分でわかる社会的養護のポイント

まずは要点だけを並べます。
ここを読めば、全体像はつかめます。

  • 社会的養護とは、親と暮らせない子供を、国や自治体が責任を持って育てる仕組み
  • 対象になっている子供は、全国で約4万2千人
  • 暮らす場所は、里親やファミリーホームの「家庭」と、乳児院や児童養護施設などの「施設」に分かれる
  • 国は、できるだけ家庭に近い環境で育てる方針をとっており、里親に託される子の割合は少しずつ増えている
  • 児童養護施設で暮らす子の95.4%には、両親かひとり親がいる
  • 18歳で一律に支援が終わるわけではなく、20歳未満までの延長や、その後の自立支援もある

ここから先は、気になったところだけ拾い読みしても大丈夫です。

社会的養護は「公的責任で子供を育てる」仕組み

こども家庭庁は、社会的養護のページで次のように定義しています。

「保護者のない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童を、公的責任で社会的に養育し、保護するとともに、養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行うこと」

ポイントは「公的責任で」という部分です。
親が育てられないとき、子供を育てる責任は社会が引き受ける。
そのために、里親や施設、その費用の仕組みが整えられています。

似た言葉に「社会的養育」があります。
国の検討会がまとめた「新しい社会的養育ビジョン」では、社会的養育の対象は家庭で暮らす子供も含めた「全ての子ども」とされています。
社会的養護は、その中でも行政が関わって確実に支援を届ける部分を指す、と考えると整理しやすいです。

子供が社会的養護につながるまで

子供が施設や里親家庭で暮らすようになるまでには、おおむね次の流れがあります。

  1. 家族や学校、近所の人などから、児童相談所に相談や通告が入る
  2. 児童相談所が家庭の状況を調べ、子供の心身の状態を診断する
  3. 子供の安全を守る必要があれば、一時保護を行う
  4. 家庭に戻すか、里親や施設に託すかを決める

一時保護については、令和4年の児童福祉法改正で新しい手続きが設けられました。
親権者などが同意した場合などを除き、保護を始める前か、始めてから7日以内に、裁判官へ「一時保護状」を請求します。
子供を親から離す判断を、児童相談所だけで完結させないための仕組みです。

すべての相談が施設入所につながるわけではありません。
こども家庭庁の資料集社会的養育の推進に向けて(令和8年3月)によると、令和6年度に児童相談所が虐待の相談として対応した件数は223,691件でした。
そのうち虐待を理由に施設入所や里親委託などに至ったのは4,386件です。
多くの家庭では、子供が家で暮らし続けながら支援を受けています。

親と暮らせない子が暮らす場所

家庭養護:里親とファミリーホーム

家庭で子供を育てる形を「家庭養護」と呼びます。
中心になるのが里親で、令和7年3月末時点で18,038世帯が登録し、5,411世帯に6,637人の子供が託されています。

里親には4つの種類があります。

種類どんな里親か委託されている子供
養育里親一定期間、家庭で子供を育てる5,198人
専門里親虐待の影響や障害などで、特に支援が必要な子供を育てる214人
養子縁組里親養子縁組を前提に子供を育てる394人
親族里親親が亡くなったり入院したりしたとき、祖父母などの親族が育てる831人

専門里親は養育里親の一種で、登録が重なっている人もいるため、各欄を足しても総数とは一致しません。
養育里親には、子供を育てる費用とは別に、月90,000円の里親手当が支給されます(令和7年度)。

ファミリーホームは、養育者の自宅で5〜6人の子供を育てる形です。
全国に505か所あり、1,862人が暮らしています。

施設養護:乳児院・児童養護施設など

施設で子供を育てる形が「施設養護」です。
主な施設は次のとおりです。

施設主な対象施設数暮らす子供
乳児院乳児(必要な場合は小学校入学前まで)147か所2,289人
児童養護施設1歳から18歳未満(必要な場合は0歳から20歳未満)607か所21,472人
児童心理治療施設家庭や学校での人間関係などから、社会生活になじみにくくなった子供53か所1,299人
児童自立支援施設不良行為をした、またはするおそれのある子供など58か所1,130人

数字はこども家庭庁の資料集によるもので、児童自立支援施設は令和6年10月1日、ほかは令和7年3月末の時点です。
このほか、母と子が一緒に暮らせる母子生活支援施設や、義務教育を終えて施設などを出た若者が暮らす自立援助ホームもあります。

いちばん数が多いのは児童養護施設です。
社会的養護と聞いて多くの人が思い浮かべるのも、この施設だと思います。

暮らす期間は人によって大きく違います。
こども家庭庁によると、児童養護施設での平均の在籍期間は5.2年で、10年以上暮らしている子も14.9%います。

国が里親や小さな施設を増やそうとしている理由

2016年に改正された児童福祉法で、「家庭養育優先原則」が定められました。
子供はまず生まれた家庭で育つよう支える。
それが難しければ里親など家庭と同じような環境で、それも難しければできるだけ家庭に近い小さな施設で育てる、という順番です。

こども家庭庁の里親制度のページには、子供が育つうえで「特定の信頼できる大人との間での愛着形成がとても重要」だと書かれています。
決まった大人に毎日見守られることが、子供の安心の土台になるという考え方です。

里親とファミリーホームに託される子の割合(里親等委託率)は、平成26年度末の16.5%から、令和6年度末には26.3%に上がりました。
国は「こどもまんなか実行計画2025」で、遅くとも令和11年度までに乳幼児で75%以上、学童期以降で50%以上という目標を掲げています。
令和6年度末の実績は、3歳未満が29.4%、学童期以降が23.9%で、目標まではまだ距離があります。

施設の側も変わってきています。
地域の住宅を使って4〜6人で暮らす「地域小規模児童養護施設」は全国に629か所あります。
国は施設全体を、できるだけ小規模にして地域に分散させる方針をとっています。

誤解されやすい3つのこと

「施設の子は親がいない」

こども家庭庁の児童養護施設入所児童等調査(令和5年2月1日現在)によると、児童養護施設に入った時点で「両親又はひとり親あり」だった子は95.4%でした。
入所の主な理由でいちばん多いのは「母の放任・怠だ」の16.4%で、父母の死亡は合わせて2.2%です。
虐待を受けた経験がある子は71.7%にのぼります。

親はいても、一緒に暮らせない事情がある。
いまの社会的養護の中心にいるのは、そうした子供たちです。

「18歳になったら施設を出なければならない」

児童福祉法では、児童は18歳未満と定められています。
ただ、児童養護施設や里親家庭では、必要なら20歳未満まで措置を延長できます。

実際には高校卒業と同時に施設を出る子が多いものの、延長する子も増えています。
令和6年度に高校を卒業した児童養護施設の子のうち、456人(27.6%)が措置を延長しました。
2024年4月からは、施設を出たあとの自立を支える事業についても、年齢で一律に利用を区切る制限がゆるめられています。

「里親は養子をもらうこと」

こども家庭庁の里親制度の特設サイトには、養子との違いがこう書かれています。
「里親は一定期間自分の家庭でこどもを養育する制度です。親子になるわけではありませんが、実の親が育てることができない間、こどもの成長を支える大事な存在です」

先ほどの表のとおり、委託されている子の多くは養育里親のもとにいます。
同じサイトでは、裕福でなければなれないわけではないこと、独身だからといって一律になれないわけではないことも説明されています。
子育ての経験がなくても里親になれますし、共働きでも基本的に問題はないそうです。

私たちにできる関わり方

里親になるまでの流れは、特設サイトで4つのステップにまとめられています。

  1. 児童相談所や里親支援センターなどに相談する
  2. 施設での実習を含む数日間の研修を受け、家庭訪問で家庭環境の調査を受ける
  3. 都道府県などの審査を経て、里親として登録される
  4. 面会や外出、宿泊で子供と過ごしたあと、家庭に迎える

とはいえ、里親になるのは大きな決断です。
社会的養護に関わる方法は、それだけではありません。

  • 週末や夏休みに施設の子を家庭に迎える「週末里親」「季節里親」(東京都では「フレンドホーム」)
  • 施設での学習支援や行事の手伝いなどのボランティア
  • 施設や、施設を出る若者を支える団体への寄付
  • 会社の社会貢献活動として、同じ施設を長く支える

週末里親は、週末や長期休みに数日から1週間ほど、施設で暮らす子を家庭に迎える取り組みです。
平日は時間が取れない人や、いきなり長く預かるのは不安な人に向いています。
自治体独自の制度なので、名前や研修の有無は地域によって違います。
ボランティアとして施設に通ううちに、週末里親に登録した方も、私のまわりに何人かいました。

最後の企業の支援で、私がよく例に挙げるのが、エステティックサロン「たかの友梨ビューティクリニック」です。
同社は1989年から、群馬県前橋市の児童養護施設「鐘の鳴る丘少年の家」を支援しています。
1999年からは毎年夏休みに子供たちを東京ディズニーランドへ招待し、2025年12月には6年ぶりに対面でクリスマス会を開きました。
30年以上続く関わりの中身は、たかの友梨さんの子供たちへの支援をまとめたページで読めます。

関わるときに覚えておいてほしい声があります。
厚生労働省の調査研究事業として、施設や里親家庭を離れた人を対象に行われ、2021年3月にまとめられた全国調査の自由記述です。

「施設で暮らしている子も親が側にいないだけで、可哀想だと決めつけられないように、平等に評価を受けられるように、施設への理解を沢山の人に深めていってもらいたい」

こども家庭庁の特設サイトに載っている、社会的養護を経験した若者の座談会でも、2歳から18歳まで児童養護施設で育った山内ゆなさんが次のように話しています。

「養育里親は難しくても、週末里親に登録してみたり、施設へのボランティアに参加してみたりと一歩踏み出す方が増えることで、1対1の関係を築けるこどもの数が増えていくと思っています」

どちらの声も、ボランティアの説明会で私が最初に伝えてきたことと重なります。
特別な子として見るのではなく、たまたま親と離れて暮らしている、ごく普通の子供として接してください。

まとめ

社会的養護の要点をもう一度振り返ります。

  • 親と暮らせない子供を、公的責任で育てる仕組みが社会的養護
  • 対象は全国で約4万2千人で、里親などの家庭と、児童養護施設などの施設で暮らしている
  • 国は家庭に近い環境を優先する方針で、里親等委託率は26.3%まで上がった
  • 施設の子の多くには親がいて、18歳で一律に支援が終わるわけでもない
  • 里親以外にも、週末里親やボランティア、寄付など関わり方はいくつもある

制度の名前は難しく聞こえますが、支えているのは一人ひとりの大人です。
近くの児童相談所や自治体の窓口に、里親や週末里親の説明会がないか調べてみる。
そこから始めてみてください。

最終更新日 2026年10月27日 by essall