平均・中央値・最頻値、使い分けを現場の会話レベルまで落とし込む

はじめまして、データ活用アドバイザーの森原亮太と申します。
食品メーカーで7年間営業をやったあと、本社のマーケティング部でPOSデータの分析を担当し、いまは中小企業向けにデータ活用の研修をしています。

こう書くと数字に強い人間に見えるかもしれませんが、営業時代の私は数字が本当に苦手でした。
異動が決まったときに統計の入門書を3冊買って、3冊とも途中で止まったままです。

その私が最初につまずいたのは「平均」でした。
正確に言うと、平均でつまずいたのではありません。
平均しか持たないまま会議に出ていたことでつまずきました。

この記事では、平均値・中央値・最頻値の3つを、定義の暗記ではなく「会議室でどう使い分けて、どう説明するか」というところまで落とし込みます。
計算式はほとんど出てきません。

「その平均、どなたのことですか」と聞かれた日

分析担当になって3ヶ月目に、新商品の購入者データを役員会で報告しました。
用意した数字は「平均購入単価4,800円」の一枚です。

そこで飛んできたのが、この質問でした。

「4,800円くらい買っているお客さんは、何人いるの?」

答えられませんでした。
会議のあとで数え直したら、4,500円から5,000円の間で買っている人は全体の1割もいませんでした。

実際に多かったのは、2,000円前後で1点だけ買う層です。
その一方で、1万円を超えるまとめ買いをする層が少数いました。
購入者は2つの山に割れていて、平均の4,800円はその谷間の、誰もいない場所を指していたわけです。

平均は「全体をならすといくらか」を教えてくれる数字であって、「多くの人がいくらか」を教えてくれる数字ではありません。
このズレを知らないまま平均を出し続けると、実在しない平均的なお客様に向けた施策ができあがります。

総務省統計局が運営する学習サイトなるほど統計学園でも、集団の中心的な傾向を表す値をまとめて代表値と呼び、外れ値の影響の受けやすさは平均値がいちばん大きく、中央値、最頻値の順に小さくなると説明されています。

国が出している数字で見ると、差はここまで開く

自分の会社のデータだと「うちが特殊なだけでは」と思われがちなので、研修では必ず国の統計を見せています。

厚生労働省の2025(令和7)年 国民生活基礎調査から、2024年の1年間の所得です。

  • 1世帯当たりの平均所得金額は575万2千円
  • 中央値は451万円
  • いちばん世帯数が多い所得階級は「200〜300万円未満」で13.5%
  • 平均所得金額以下の世帯は61.5%

同じ調査の、同じデータです。
それなのに、どの代表値を使うかで示される金額が575万2千円、451万円、200万円台と、まったく違う場所になります。

そして平均以下が6割を超えます。
「平均=真ん中」だと思っていると、この一行の意味が読めません。

会議で平均だけを出すというのは、この61.5%の存在を消したまま話を進めるのと同じことです。

3つの代表値を「何を答える数字か」で覚える

研修では、計算方法から入るのをやめました。
覚えてもらうのは、それぞれが「どんな問いに答える数字なのか」だけです。

代表値答えてくれる問い強い場面弱点
平均値全体をならすといくらか売上・原価など合計に戻す話極端な値に引っ張られる
中央値真ん中の人はいくらかばらつきや外れ値が大きいデータ掛け算で合計に戻せない
最頻値いちばん多いのはどれかサイズ・プランなど選択肢のデータ山が複数あると絞れない

この表で押さえてほしいのは、右端の弱点の列です。
3つのうちどれが優れているという話ではなく、どれにも使えない場面があるという話だからです。

とくに誤解されやすいのが「中央値のほうが正確」という言い方です。
中央値は掛け算で合計に戻せないので、売上や原価のように足し算・掛け算をしたい場面では平均のほうが正しく機能します。

最頻値は「靴のサイズ」で考えると腹落ちする

最頻値がいちばん軽く扱われがちなのですが、実務ではむしろ出番が多い数字です。

文部科学省の小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編に、こんな例が載っています。
靴メーカーが来年どのサイズを多く作るかを決めるとき、今年売れた靴のサイズの平均を求めて、そのサイズを最も多く製造したりはしません。
いちばん多く売れたサイズ、つまり最頻値を使うほうが望ましい、という説明です。

同じ解説の中では、分布が左右非対称だったり山が複数あったり、極端にかけ離れた値があったりすると、平均値は代表値としてふさわしくないことが明記されています。
代表値を使うときは、データの特徴と、何のために使うのかをはっきりさせて選ぶ必要がある、とも書かれています。

小学校の指導要領を引き合いに出したのには理由があります。
この改訂で、平均値・中央値・最頻値は中学1年から小学6年の内容に移りました。
つまり、いま社会に出てくる若手は全員、小学生のうちに3つとも習っているということです。

「難しい統計の話」ではなく「一度習ったことの使い方の話」だと捉え直すと、社内での持ち出し方もずいぶん楽になります。

会議のどの場面で、どれを出すか

ここからが本題です。
定義がわかっても、実際の会議でどれを出すか迷うのであれば、まだ使える状態ではありません。

私が研修で配っている対応表を、そのまま載せます。

会議の場面主役にする代表値添えると効く数字
売上・予算・原価の試算平均値件数と合計
顧客単価・年収・貯蓄などの実態把握中央値平均値も併記
品揃え・サイズ・プラン設計最頻値上位3つの構成比
納期・問い合わせ対応時間中央値最大値と、遅い側の割合
アンケートの選択肢の集計最頻値2位との差

いちばん間違いが起きやすいのは、上から2行目と4行目です。

顧客単価は、少数の大口顧客がいるだけで平均が跳ね上がります。
納期や対応時間は、遅れた案件こそが問題なのに、平均を出すと速い案件がそれを薄めてしまいます。
「平均3日です」と報告した裏で、2週間かかった案件が数件あって、クレームになっているのはそちらです。

逆に、来期の売上を積み上げる場面で中央値を持ち出すと話が壊れます。
中央値に件数を掛けても合計にはならないからです。

もうひとつ、最頻値の使いどころも書いておきます。
研修先で多いのが、メニュー構成やサービスのプラン設計の相談です。
このとき平均注文金額を出しても、その金額の商品を作りましょう、という結論にはなりません。

効くのは「いちばん選ばれている価格帯はどこか」で、これは最頻値の領域です。
選ばれている帯のひとつ上に主力商品を置く、といった判断は、平均からは絶対に出てきません。

アンケートの集計も同じです。
5段階評価の平均が3.4だと言われても動きようがありませんが、「4を選んだ人が最も多く、次に多いのが2」とわかれば、満足している層と不満を持つ層に割れていることが見えます。
平均の3.4は、そのどちらでもない場所です。

「なぜ平均じゃダメなんですか」と言われたときの返し方

ここが、多くの人が最後に詰まるところです。
自分は納得できたけれど、数字が苦手な上司や同僚に一言で説明できない。

私がそのまま使っている言い回しを3つ載せます。

  • 「平均がダメというより、今回のデータだと平均が誰のことも指していないんです。真ん中の人を出すと2,300円で、そこが本当のボリュームゾーンです」
  • 「平均は全体をならした数字なので、合計を出すときには正しいです。ただ、お客様1人の実感に近いのは中央値のほうです」
  • 「厚生労働省の調査でも、世帯所得の平均は575万2千円ですが、平均以下の世帯が6割を超えています。うちのデータも同じ形です」

3つめのように、国の統計を引き合いに出すのがいちばん摩擦が少ないです。
自分の主張ではなく、公的な調査でも当たり前に併記されている、という形に持っていけるからです。

「中央値にすると数字が悪く見える」と言われたとき

これも高い確率で返ってきます。
とくに、これまで平均で報告してきた数字を差し替える場面では必ず出ます。

このときに私が使うのが、貯蓄のデータです。

総務省統計局の家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年平均結果によると、二人以上の世帯の貯蓄現在高は平均2,059万円です。
一方、貯蓄を持っている世帯の中央値は1,264万円になります。

そして統計局自身が、報告書の見出しに「貯蓄現在高が平均値(2059万円)を下回る世帯が約3分の2を占める」と書いています。
実際、平均を下回る世帯は66.1%です。

国の統計が、自分たちの出した平均について「これを下回る世帯が3分の2ある」とわざわざ注記している。
この事実は、数字を悪く見せる話ではなく、数字を正しく見せる話なのだと伝えるのに、とても効きます。

報告書に載せるときのフォーマット

言葉で説明しきれないときは、書き方を固定してしまうのが早いです。
私は報告書のこの一行を定型にしています。

「平均○○円/中央値○○円/最も多い層は○○円台(全体の○%)」

3つ並べておけば、読み手が自分で判断できます。
どれか1つに絞って説明責任を負うより、並べて出したほうが、結果的に議論が短くなります。

明日から現場でできる3ステップ

最後に、実際に手を動かす順番を書いておきます。

  1. Excelでヒストグラムを作り、山がいくつあるかを先に見る
  2. AVERAGE、MEDIAN、MODE の3つの関数を並べて計算する
  3. 山が2つあったら、母集団を分けてから計算し直す

順番が大事です。
関数を先に走らせると、出てきた数字が信用できるものかどうか判断できません。
分布の形を見てから代表値を選ぶ、という順番だけは崩さないでください。

3の「分ける」は、実は最も効果が大きいところです。
私の失敗談の購買データも、2,000円台の単品購入層とまとめ買い層に分けた瞬間に、それぞれの平均が意味を持ち始めました。
1つの平均で語ろうとするから無理が出るのであって、集団を正しく割ってしまえば平均は十分に使える道具です。

統計の考え方をひととおり見渡しておきたい方には、マンガから入るという手もあります。
2026年8月に明日香出版社から出た『決定版 統計学がマンガで3時間でマスターできる本』は、経営学者の中川功一さんが全8章・80テーマで書いた入門書で、第1章には「『平均』では隠れてしまう現実」という項目が置かれています。
数式を追うのではなく「つまり、どういうことか」をつかむ作りになっているので、私のように入門書で3回挫折した人間には向いていると思います。
気になる方は決定版 統計学がマンガで3時間でマスターできる本の内容をまとめたページをご覧ください。

もっと体系的に学び直したいのであれば、日本統計学会が認定する統計検定にビジネス向けの区分があります。
資格そのものより、出題範囲が学習の順路として使えるのが利点です。

まとめ

平均値・中央値・最頻値は、優劣のある3つではなく、答えてくれる問いが違う3つです。

  • 平均値は「ならすといくらか」、合計に戻す話で使う
  • 中央値は「真ん中の人はいくらか」、ばらつきの大きいデータで使う
  • 最頻値は「いちばん多いのはどれか」、選択肢のあるデータで使う

そして現場で本当に効くのは、この使い分けを自分が理解することよりも、周りに一言で説明できるようになることです。
「平均以下が6割います」と国の統計を引きながら話せるようになると、会議の景色が変わります。

私自身、役員に「その平均、どなたのことですか」と聞かれた日から、報告書に3つ並べて書くようにしました。
それだけで、数字の話で止まる会議がずいぶん減りました。

まずは手元のデータを1つ選んで、平均と中央値を並べてみてください。
差が開いていたら、そこにあなたの会社の見落としが埋まっています。

最終更新日 2026年8月23日 by essall